なぜ私たちはDioseve社に投資したのか

なぜDioseve社、なぜ日本なのか

生殖生物学は近年、ハードテック領域における重要なフロンティアとして注目を集めています。不妊治療のあり方そのものを変革する可能性を秘めており、Dioseve社はまさにその最前線で事業を展開しています。

また、Dioseve社はPangaeaにとって日本で初めて投資するスタートアップでもあります。私たちはこれまで、日本におけるハードテック起業家を支援するための基盤づくりを進めてきましたが、同社はその戦略を具体化する最初の事例となります。

Dioseve社は、CEOの岸田一真氏によって共同創業、牽引されています。同氏は患者視点への深い共感に加え、投資銀行業務や事業立ち上げを通じて培った実行力を兼ね備えています。資金調達、パートナーシップ構築、そして異なる規制環境への対応について明確な理解を有しており、同社が将来的に海外市場へと展開していく上でも重要な強みになると考えています。

不妊治療における明確な課題

不妊治療市場は大きく、今後も成長が見込まれています。しかし患者にとっては依然として負担が大きく、高額で、身体的にも精神的にも厳しい治療であることに変わりはありません。

世界の不妊治療市場はすでに360億ドルを超える規模に達していますが、体外受精(IVF)の成功率は依然として限定的です。また、既存の体外成熟(IVM)技術も有効性のばらつきから十分に普及しているとは言えません。

多くの患者は複数回の治療サイクルを経験し、大量のホルモン投与や度重なる通院を余儀なくされています。それにもかかわらず、期待するほどの確実性が得られないケースも少なくありません。この状況は、不妊治療の過程を必要以上に困難なものにしており、治療成績を向上させながら患者負担を軽減できる新しいソリューションへの強いニーズを生み出しています。

Dioseve社の第一号製品である「DIOS-101」は、この課題の重要な部分を解決することを目指しています。iPS細胞から作製した顆粒膜細胞様細胞を用いて体外にて卵巣に近い微小環境を再現し、IVFにおける未成熟卵子の成熟を支援する技術です。

実用面では、ホルモン投与量、通院回数、治療費の低減を実現しながら、患者と医療機関の双方にとってより効率的な不妊治療を可能にすることが期待されています。

確かな科学と実用的な製品

私たちが強く惹かれたのは、製品の臨床的な合理性だけではありません。その背景にある確かな科学的根拠です。

共同創業者である濱崎伸彦博士が共著者として参加した研究では、卵子成長を誘導するのに十分な転写因子群が特定され、多能性幹細胞を受精および初期胚分割能力を持つ卵子様細胞へと変換できることが示されました。

さらに、その科学的系譜に連なる先行研究では、多能性幹細胞から機能的なマウス卵子を体外で作製し、実際に産仔を得ることにも成功しています。これは女性生殖細胞系列のライフサイクルを培養皿上で再構築した画期的な成果でした。

これらの研究成果は、生殖生物学領域で事業を展開する企業にとって非常に強固な科学的基盤となります。特にDioseve社のように、臨床応用が比較的近い製品をすでに開発している企業にとってはなおさらです。

科学的信頼性が極めて重要なこの分野において、Dioseve社のアプローチは高度な技術を持つ革新的なプラットフォームと、市場投入が比較的早期に可能で臨床現場に組み込める実用的な製品であり理想的だとも言えます。

また、私たちは同社の事業戦略の堅実さにも注目しました。

DIOS-101は、将来的な体外配偶子形成(IVG)の実現に賭ける「オール・オア・ナッシング」のような長期的な構想として位置づけられているわけではありません。まずは既存の不妊治療プロセスを改善する近未来型の製品として設計されており、患者負担を軽減するとともに、競争の激しい市場において医療機関へ差別化された価値を提供する可能性を持っています。

私たちが描く未来

より広い視点で見ると、Dioseve社はハードテックの未来が向かう方向性を象徴しています。

これからの生物学領域を代表する企業は、単なるソフトウェアや漸進的なサービスモデルから生まれるとは限りません。細胞生物学、発生生物学、そしてエンジニアリングにおける深い科学的ブレークスルーを実際に使われるシステムへと転換し、明確な臨床的・商業的価値を創出できるチームから生まれると考えています。

私たちはDioseve社にその可能性を感じています。

短期的には不妊治療に伴う患者負担を軽減しながら、長期的には生殖医療そのものの未来を変革し得る技術基盤を構築する企業です。

その挑戦を支援できることを、私たちは大変楽しみにしています。

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Why We Invested in Dioseve