半導体スタートアップに私たちが求めるもの
Hard Tech(Deep Tech)企業に私たちが求めるものの多くは、セクターを問わず共通しています。独自のIP、定量的に差別化されたValue Proposition、資本効率、そして信頼できるチーム。数か月前、PangaeaのパートナーであるAndrew Haughianは、博報堂DYホールディングスとともにセミナーを開き、最近発表したHard Tech Reportの内容を共有しました。同レポートの多様な調査結果を掘り下げて紹介した後(詳細は[こちら]からダウンロードできます)、Andrewは、他産業とは異なる半導体およびAIインフラ企業が直面する特有の点に関して話しました。
業界ロードマップに組み込まれる
新しい技術は、それ自体が優れていても、業界にとって重大な課題を解決していなければ、どこにもたどり着けないことがあります。Andrewは、私たちが重視するこの観点を「スロッティング(slotting)」と呼んでおり、それは技術が業界のロードマップと合致し、業界が同ロードマップに足を踏み入れている一歩手前の状態を指します。私たちの見方では、これは半導体とAIインフラで成功するために不可欠です。自社がどこに収まるのかを、明確で反論にも耐えうる形で説明できる必要があると考えます。
十分な価値を獲得する
技術を保有するスタートアップは、当然ながら顧客に大きな価値を届けることを目指します。問われるのは、その価値の一定数をスタートアップ自身が獲得できるかどうかです。これは、自社の技術が顧客や業界全体にとって定量的にどれ程のインパクトをもたらすのか、例えばWafer1枚あたり、あるいはチップ1個あたりのDallar Valueで測り得る基準を持ち、その変化の対価をいかに自社に取り込めるかという観点が重要になります。
パートナーが判断を左右する
他のセクターでは、投資候補を評価する際に売上を重要なシグナルとして扱うことが挙げられます。半導体では、エコシステムパートナーが判断のより大きな部分を占めることが少なくありません。スタートアップが誰と組んでいるのか、そしてその相手が業界のリーダーかどうかを明確にしておくことは重要です。これらの技術が市場に持ち出されるには、パートナーシップが欠かせないからです。できれば、パートナーは複数いることが望ましいです。
Pangaeaの最新のポートフォリオ企業であるNLM Photonicsは、分かりやすい例です。NLMは、データセンター内でのデータ移動を低消費電力で行うことを目指し、シリコンフォトニクス向けの電気光学材料Selerion™を開発しています。材料は、実際に動作するデバイスに組み込まれて初めて性能が証明されるため、NLMにとってパートナーは、そこに至るための道筋です。Spark Photonicsは、NLMの光変調器とチップレイアウトの設計サービスを提供し、AIM Photonicsの300mmプラットフォームでのカスタムウェーハランも手がけました。カールスルーエ工科大学(KIT)からスピンアウトしたSilOriXは、シリコン有機ハイブリッドデバイスの設計力と、NLMの材料に関するこれまでの経験を持っています。両社は9月に、高速光通信でのSelerion-HTXの活用拡大に向けた共同開発契約を結びました。東京応化工業、浜松ホトニクス、三菱ケミカルも出資しています。
業界知見
他領域のポートフォリオ企業のなかでも特に優れた成果を上げている企業のいくつかは、比較的若く、業界での直接の経験がない経営者によって創業されています。彼らは特定の課題を独自の視点で捉え、それが成功の鍵の一つとなりました。Andrewの見方では、半導体ではこの道筋は起こりにくくなると考えています。むしろ、業界を知り、大手企業で働いた経験を持つメンバーがいるチームが求められる可能性が高く、そうした経験はスタートアップに必要なパートナーとの関係にもつながることが多いです。チームが初期段階でそうした経歴に乏しい場合は、周囲に誰がその経験を持っているのかも重要になります。
このリストが完璧に網羅的であるわけではなく、投資判断はこれら4つ以外の要素にも幅広く基づいています。これらは、半導体とAIインフラがスタートアップに最も異なる問いを投げかけるポイントであり、技術革新を一部のアイデアから、物事の進め方に欠かせない存在へと押し上げる最良の機会をつかむために必要となる可能性が高い条件だと、私たちは見ています。